煌ける豚

僕の部屋に 煌ける豚が住み着いてしまった
あんなに辞めろと言ったのに

「俺は絶対、干草なんか食べない!」

そう豚が決意したからだ
豚は持ち前の煌きで、僕の枕元から全速力で走り出し
やっとの事で肘の直ぐ傍を走っている
ぶーぶー文句を言うのは、さすが彼の魅力だ

「この部屋には、うまいモノが一つも落ちていない!牧場にいる頃は、あんなに食料に困らなかったのに!」

豚は壁中に湿った鼻を押し付けている
調べた証拠を残すためだ
物覚えが悪い煌ける豚は 宿敵として自分の20倍はあるであろう 犬をいつも目標に頑張っている

「負けない…負けない…!ココは俺の縄張りなんだ!」

そういって犬の頭の上に 豚はマーキングを始めた
豚にしては なかなか上出来であった
だけどそのままだと マーキングに使用した際のものが
犬の目に入って ついでに臭いので
僕は豚の首の後ろをつかんで壁に投げつけた

「そうだ!俺はこのときを待って居たんだ!」

ただでさえ眩しい光を放っている豚が
更に輝きを増した

いつか あの犬を負かしてやろうと
豚はソーセージの製作に追われていた
このままでは この冬を無駄に過ごすと考えたからだ
受話器を前にして 求人広告を眺める
広告用紙は豚にとってとても大きいので
僕は広告を広げたまま 豚が読み終わるまで待っている

「よし、この肉にする。お前、受話器を取れ」

僕は彼の顔の2倍はあるであろう受話器を差し出した
そして豚は 全身の力を込めて ダイヤルをするのである
ただし 豚は最後の2桁寸前でダイヤルを辞めた
その目には溢れんばかりの涙が

「どうせ、こんな小さい豚!雇ってくれないさ!」

そんな事を言うもので、僕は思いっきり豚の頬をひっぱたいてやった。

「このままじゃ、皆飢え死にだ!お前がソーセージを作らないで、誰が作るんだ!」

すっかり消えそうになっていた煌きを取り戻した豚は
2ヶ月ほど家を出たまま未だに音信が無い
犬は豚が残していった手帳を眺めて呟いた

「こうなる事を、あいつは分かってたんだな…」

手帳に記された バーゲンセールの行われる日が 鼻の跡で滲んでいた

インターホンが鳴る
そこには映っていない

よく見たら目映いばかりの光が映し出されていた
光の中から豚がやってきて言う

「やっとわかった!おれはこのままでいいんだ!」

そういって豚は犬の口の中に飛び込んで行った
犬はまた今日から食生活を改善しなければならない日がつづく

「こんな奴でも、いないと案外寂しいもんなんだよ。」

そうして犬は
いつもよりヘルシーなドッグフードを指差した

豚は犬の中で安心して寝ている