ソロ楽器とピアノ、と言う編成に於いては、初めて終止線まで行き着いた曲。
クラリネットと言う楽器の性質に着目し、音色の持つ特性と、
それに対応する和声の関係を結びつけて作曲してみました。
2006年夏に初演が行われ、その年の冬に再演を行いました。
約11分。

アレクサンドル・グラズノフのロマン的手法と、複調によって転調の過程を工夫してみました。
一般的にクラリネットは3つの音色に分けて考えられ、 それらを意識して書くと、楽器に適した運指に近づけることとなりました。
シャルモー音域では、基本の調をメインとしたパッセージを奏させ、一般にクラリネットの「喉の音」と呼ばれる部分に近づくにつれ、長調の中でもあまり使われない、突然のナポリⅡの出現などで、Es-dur内の和声でありながら拡大した調性感を出しています。
クラリーノ音域に於いては、この曲に於いて最初に設定してあった、増3和音、増4度と完全4度の組み合わせによる長7度音程などに行き着くように、声部毎に別の転調の過程を施し、最終的には複調的な手法で調をぼかしてゆきます。
この和音群に設定した理由としては、僕が好きな音であることと、当時アルバン・ベルクとアントン・ヴェーベルンの楽曲分析を行っていたことから、耳が特にそういう方向に流れていたんだと思います。

ソナタの形式としては至ってシンプル。
メロディックな主題なので、それをいくつかの素材に分割して展開部を形成しています。
曲を構成する主題要素が、この曲の場合3つあります。
第1主題と第2主題が対照的に扱われることがよくありますが、この曲に於いては冒頭のイントロ主題、および第1、第2を殆ど同等に扱っています。
特にリズム面などでは順位に差がありません。
それぞれ3つは、和声的に違う特徴を持たせており、曲が時間を掛けて変化していくようにとした結果です。

再現部は第2主題を、少しヴィルトーゾ的なパッセージを加え、一気に終結へ向かいます。
再現部で少し第1主題が織り交ざっているのも、先に述べた優先順位の関係もありますが、やはりベルクのピアノソナタの構成の影響も否めません。
演奏

2006年度島村楽器ユーカリが丘店の発表会において初演。
永田絵莉, clarinet
大沼弘基, piano

2006年度武蔵野音楽大学入間校舎作曲学科試演会にて演奏。
永田絵莉, clarinet
増渕美恵子, piano